自撮りで伝える遺言『最後のロードトリップ』すべてと向き合うためのロードムービー

出典:IMDb

友人の遺言を叶えるための旅

若くして死んだ親友の遺言は遺灰をイギリス中に撒いてもらうこと、女友達2人その遺言を実現するために、各地を巡っていくというロードムービーです。

その旅路の中で自分自身と向き合い、それぞれが成長していく姿が描かれていきます。

あらすじ

死んだ親友の願いは、遺灰をイギリス中に撒いてもらうこと。2人の女友達は、遺言に導かれるまま各地を巡る。それは、彼女達が自身と向き合う旅にもなってゆく。
引用:Netflix

キャスト・スタッフ紹介

  • 制作国:イギリス
  • 公開年:2015年
  • 上映時間:95分
  • 監督:ローラ・カーマイケル
  • キャスト:クロエ・ピリー、ジャック・ファーシング

予告編

遺言は自撮りで

最近は自撮りの映像を目にする機会がとても多くなりました。iPhoneをはじめとするスマートフォンのカメラで簡単に動画が撮影できることなども関係し、動画サイトなどでは当たり前のように自撮りの動画がたくさん上がっています。

映画の中で自撮りの映像を目にする機会は、まだまだそう多くはありません。しかし、この映画ではこの自撮りという手法が多用され、それが物語をつなぐ大事な役割を果たしています。

その自分自身を撮影するという手法は、通常の映像における撮影者の目線の役割を果たす映像とは逆の、我々の目線を撮影者に向けるという、視点の逆流のような現象が起こっているとも言えます。

この視点が逆になるという現象により、撮影者が見ている風景ではなく、撮影者の表情や考えに目を向けることになります。

つまり自撮りは撮影者が自分の思いをぶつけるのに最適な撮影方法であり、メッセージや遺言を残すには最適な手法とも言えます。

この映画の重要人物であり死期が近いダンという青年は、この現代的な自撮りという手法を利用して、親友2人に遺言を残します。

しかもそれはUSBメモリの中にデータとして収められています。

死と自分と向き合う旅

遺言は親友で女友達のアルとセフに向けた非常に重要なものでした。

それはダンの遺灰をイギリス中の指定する場所に撒いて欲しいとのことでした。ダンは弱っていく自分自身を時系列で自撮りしながら、親友2人に大切なメッセージを残していました。

ダンから用意された古い車に乗り込み、メッセージ動画を再生するためのラップトップパソコン、遺灰を詰めたプラスチックの容器を持って、2人はイギリス中を周る旅に出発します。

遺灰を撒く場所ごとメッセージは用意されていて、アルとセフの2人は戸惑いながらも車を走らせ、ダンの願いを遂行していこうとします。

しかし多くの人々がそうであるように、アルとセフも様々な悩みの中で生きていました。友人との関係についてや、仕事の悩み、恋人や親や家族とのことなど、生活や人間関係のにおいて、頭を悩ませる事は多く付きまといます。

さらにアルとセフの2人の関係の中にも、少しだけギクシャクとした、わだかまりのようなものもあり、旅の途中でもそういった様々な事情が顔を出し、時には険悪になり口論などになってしまうことも多々あります。

それを見透かしていたかのようにダンは2人に向けて、時には真実を伝えながら遺灰を撒くように指示を出していきます。

それは彼女たちが自分自身と向き合い、前を向き成長するための旅でもあるのです。

メッセージの中にあるもの

死というとても暗くて恐怖を伴う出来事に対して、その怖さを隠すかのようにダンは明るく振る舞い自撮りで映像を残しています。ある段階で死を受け入れてしまっているような振る舞いです。

それは「俺はきちんと死と向き合っている、2人もしっかり自分自身と向き合えよ」というようなメッセージにも感じられます。

悲しみや痛みからついつい目を背けたり、考えないようにしたりするのは、時には仕方ないことだし、それが防御の役割を果たすのも確かです。

しかしそのつらさから目を背け続けることはきっと出来ないのかもしれません。

いつかはしっかりと悲しみや痛みと向き合い、時間がかかっても構わないから飲み込んで消化することが、人生を生きる上で必要な行いなのだと思います。

自撮りするカメラの向こう側で垣間見せる、ダンの死に対して達観したような態度からは、自分自身ときちんと向き合うことから逃げてはいけないという、強いメッセージを感じずにはいられません。