『二ツ星の料理人』一流料理人の苦悩の果て

出典:Amazon

料理というドラマ

天才的な料理の腕を持ちながら、その素行の悪さと横暴さから、パリの二ツ星レストランでの仕事を失い、3年ほど姿を消していた男の再起を描いた物語です。

全体的にカッコ良い映像と、映画を彩る数々の美味しそうな料理、ドラマチックに展開するストーリー、と見所がたくさんの作品です。

あらすじ

一流の腕を持ちながら、トラブルを起こし、すべてを失った料理人アダム・ジョーンズ。パリの二ツ星レストランから姿を消して3年後、アダムは料理人としての再起を図るため、ロンドンの友人・トニーのレストランに「この店を世界一のレストランにしてやる」と、自分を雇い入れる約束を取り付ける。かつての同僚ら最高のスタッフを集め、新しい店をオープンさせるアダムだったが、未解決のままの過去のトラブルの代償が大きくたちはだかる。
引用:映画.com

キャスト・スタッフ紹介

  • 制作国:アメリカ
  • 公開年:2015年
  • 上映時間:101分
  • 監督:ジョン・ウェルズ
  • 出演:ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、オマール・シー、ダニエル・ブリュール、リッカルド・スカマルチョ

予告編

その男天才料理人につき

主人公の料理人アダムはかつてはパリの二ツ星レストランのエースでした。

しかし、傲慢な振る舞いや素行の悪さから、仕事を失い3年ほど下積みのような仕事をしながら、禊の時を過ごしていました。

出だしからカッコよく、料理映画とは思えないほどスタイリッシュに物語は幕を開けます。

そのクールな演出や映像美は、まるで美しい料理のように、我々の胸を踊らせてくれます。

アダムのどこまでも素材の味を理解し、その絶妙な調理法やテクニックを駆使する姿に、誰もが彼を認めざるおえません。

鴨やヒラメといったフレンチ定番の食材はもとより、新鮮な色とりどりの野菜や、ハーブやスパイスを使い、誰にも真似できない料理を作り上げます。

また天才や仕事のできる人のほとんどがそうであるように、彼はインプットも欠かしません。

それは高級なレストランだけでなく、地元の屋台や、小さなアジア料理店など、高級料理店のシェフがあまり立ち寄らなそうな場所までも足を運び、その舌へ味わいを取り込んでいきます。

料理界の暴れん坊

しかし、その才能からなのか彼はとても傲慢で、暴れん坊な側面があります。

再起をかけてロンドンで店を開く過程の仲間集めや、資金調達の際にもその傲慢なスタイルを変えようとはしません。

それでも彼の腕を認めざるおえない仲間たちが、共に集まりお店をオープンすることになります。

お店を開店してからも一筋縄ではいかないほど暴れっぷりを見せます。

しかしなぜ天才や才能のある人物は、どこか傲慢であったり、人に厳しすぎたりといった行動をとる人が多いのでしょうか。

それはおそらく天才であるが故に、常識や理論を飛び越えて、行動が飛び出してきてしまうからなのではと思います。

通常の考えであれば、『こうしたら人に迷惑がかかる』や『こういうことを言ったら人を傷つけてしまう』と言ったことさえもかき消すほどに、頭の中のアイデアや理想が先行してしまうのでしょう。

一緒に働く仲間としてはたまったものではありません。

アダムも他の料理人のやり方が気に食わず、自分の完璧さをどこまでも押し付けようとします。

その行動からは相手への感謝の気持ちや、リスペクトなどをみじんも感じることができません。

それは出来あがった料理を皿ごと投げるほど、妥協を許そうとはしません。

その味が魅せる未来

天才だけど傍若無人な料理人アダム、このとても難しそうな役柄を演じるのは、「世界にひとつのプレイブック」ブラッドリー・クーパーです。

アカデミー賞にノミネート作品に数々出演し、誰にも真似できない役柄を演じきってきた彼だからこそ、表現できるのではと思わせる世界観を見せつけてくれます。

この映画でアダムが教えてくれるのは、決して失敗しても何度でも立ち上がれる、と言った分かりやすいメッセージではありません。

なぜなら、その姿は時に自業自得と言って良いほど、傲慢さが抜きに出ているからです。

しかしそんな彼の行動は、我々の苦悩や行き詰まりと言った苦境に苛まれる姿を、どこか代弁してくれているかのように思えます。

それはどこまでも自分自身の持つ持ち味や、強みを信じて苦境に立ち向かっていこうという、強さや希望を感じさせてくれるのです。