「ユニコーン・ストア」夢見心地な感覚のリアルファンタジー

出典:IMDb

色彩豊かなファンタジックなストーリー

画家になる夢を挫折した主人公の葛藤や希望を描いた、ファンタジックなストーリが展開されます。

色彩豊かな表現や、カラフルな衣装や小道具、夢見心地感のあるサウンドトラックなど、見どころが満載です。

ブリー・ラーソンが主人公と監督を務めた本作は、葛藤や挫折を主軸に置きながらも、どこかワクワクさせるファンタジー感あふれる作品に仕上がっています。

あらすじ

画家になる夢に挫折したキットは、口うるさい両親を納得させるためOLとして働き始める。そんな彼女のもとに、謎のセールスマンから案内状が届く。不思議な店の中でキットを待ち受けていたセールスマンは、彼女が幼い頃から夢見てきたユニコーンを売ってくれるという。不審に思いながらも、ユニコーンを世話する条件としてセールスマンに提示されたミッションをこなしていくキットだったが……。
引用:映画.com

キャスト・スタッフ紹介

  • 制作国:アメリカ
  • 公開年:2017年
  • 上映時間:91分
  • 原題:Unicorn Store
  • 監督:ブリー・ラーソン
  • 出演:ブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソン、ジョーン・キューザック、ブラッドリー・ウィットフォード

予告編

自由な発想と現実

主人公のキット自由な発想と自由奔放な性格が売りのアートスクールに通う女の子です。

画家を志す彼女の描く絵は、どこまでも自由で絵画の枠に収まらない、可能性を無限に秘めた作品です。

しかし、現実世界でもそうであるように、自由すぎる発想というのは人からあまり受け入れられないこともあります。

それは例えばポートレートであれば、ポートレートを描く上でのマナーやルールが暗黙のうちに存在し、そこから逸脱しようもんなら異端とみなされ、指導者や評価者はその作品に向き合おうともしてくれません。

彼女の描くラメを振りかけた自画像にあるような、カラフルさやきらめきさなどはそこでは邪魔者扱いです。

自由な発想は開かない扉や難しい出来事に立ち向かうとき、有効なカードである事は間違い無いですが、そこには現実という硬い鍵がかかっており、その鍵を外すのは非常に困難です。

おそらくその鍵は常識やこれまでの文脈、一般的と思われている知識などで、ガッチリと固められているのでしょう。

自由な発想で物事を考えられる人は、非常に繊細で勘が良いので、無理にそこに立ち向かおうとしない人が多いような気がします。

歯向かうことをするくらないなら、いっそ自分がそこに馴染んでしまおうと思ってしまうのです。

世の中に組み込まれていく理由

それはパズルのピースをはめるくらい簡単で、すんなりとそこにおさまっていく…というわけには行きません。

現実社会は時に厳しく、出る杭にはとことん打っても良いというような空気が、そこかしこと充満しています。

色彩豊かな発想できらめきの中で生きてきた主人公のキットには、その光景はグレーで味気ないモノクロの風景に写ります。

しかし、そこに馴染めない自分に時には嫌気がさし、両親や周りの人との関係もうまくいかなくなってしまいます。

大人たるもの毎日きちんと野菜を食べて、年頃になれば結婚を前提としたお付き合いをしている恋人がいる、それはステレオタイプに感じますが、人は何かしらの偏見を前提に常識を作り上げていきます。

その常識は馴染むことができる人もいれば、馴染めない人もいる当然のことでしょう。自由が現実に組み込まれれば、あとは常識の思うがままにされるのが関の山です。

いくつになっても大人になりきれない大人にとって、空想や夢想は自分の世界を豊かにする事はできても、現実を生きる上ではとても無力です。

現実という名のモノクロームは、そう簡単には色づいてくれません。

ユニコーンはどこにいるのか

子供の頃は誰しも空想に酔いしれます。

それは誰も立ち入ることのできない領域で、極彩色の夢を描きます。そこにはユニコーンやペガサスなど、未確認だけと存在しそうな何かと遊んだり、戯れたりといった具合にです。

ユニコーンはあなたの頭の中にいる、と言ってしまえば話終わりなのですが、そう簡単なことではありません。

ユニコーンという存在は誰でも知っている共通の存在です。しかし現実にはいないとされている。

本当にユニコーンは存在しないのでしょうか?

誰もがユニコーンの特徴を口にすることができる、これは全員がユニコーンに対して共通の認識を持っているということになります。

共通の認識イコール現実です。すなわちユニコーンはその姿を確認された事はないが、現実には存在するという方程式が出来上がります。

ラメにまみれたカラフルな日々

自由は何からできているのでしょうか、自由を想起させるものといえば青春です。

青春の未熟さが持つ儚さは、時に現実を置き去りにしてしまうほど美くしです。それは写真や映像には決して写ることのない美しさです。

ある時期の記憶だけどこか色彩を帯ている、そんな記憶が誰しもあるのではないでしょうか。主人公にキットもそんな鮮やかな記憶を手掛かりに、自分を取り戻そうとしていきます。

それは人の目には馬鹿げた行為に写ってしまうかも知れない、しかしそのきらめきを取り戻すための行いこそが、大人になりきれなかった大人にとっての切り札なのです。

大人は失敗しないことが正しいとされていますが、果たしてそうでしょうか。しくじることや失敗することは、新たな学びを生み出します。

そして学びをやめないということが大人がするべき行動です。トライ&エラーを繰り返し未来に向かっていく、それが真の大人の姿であるべきです。

すなわち、”しくじるのが大人”なのです。

この美しき世界を鮮やかな色彩を持って生きる大人になるには、しくじることを受け入れてみる。

そこからすべては輝きだすはずだから。