てんかん持ちの主人公リリーが、母親の死をきっかけに、行方不明になっていた弟を探す物語です。
突如襲ってくるてんかんの恐怖と、その症状や薬による幻覚、過去の辛い記憶などに、苛まれながらリリーは街をさまよいます。
あらすじ
母の死をきっかけに行方不明の弟を捜し始めたリリー。てんかんによる幻覚と辛い過去の記憶に苛まれながら街をさまようリリーの姿を、美しくそして斬新に描く。
引用:Netflix
キャスト・スタッフ紹介
- 制作国:イギリス
- 公開年:2014年
- 上映時間:96分
- 監督:ブリン・ヒギンズ
- キャスト:アギネス・ディーン、ポール・アンダーソン、クリスチャン・クック
はじまりは港町にて
リリーはイギリスの田舎の港町のゲームセンターで働きながら、1人でゆっくりとこの街で暮らしています。
どこにでもいる女の子の風景といったところなのですが、1つだけリリーにはみんなと違うところがあります。
それはリリーがてんかん持ちだということです。
それは仕事中でも街を歩いている時でも、突如襲ってきます。まるで、幻の世界に吸い込まれるように、目まぐるしいほどの光が取り囲み、意識を失います。その間の記憶はまったくありません。
いい感じになった男性と遊びに行っても、てんかんの症状が出てしまった場合は、救急車を呼ばれて気がつけば病院のベッドか、自分の部屋のベッドの上といった具合です。
過去の忌まわしい記憶
リリーには幼い頃に母親から虐待され、ほとんど育児放棄のような状態にされていたという過去があります。
てんかん持ちであるリリーを気遣うことなく、遊びほうけているような、どうしようもない母親でした。
ある日、その母親が亡くなったとの連絡を受けます。
駆けつけた病院で横たわる母親の顔を見ていると、忌まわしい過去の記憶がリリーを襲います。
そんな、虐待されぞんざいに扱われていたリリーを、唯一守ってくれていた人物、それは弟のマイキーでした。てんかん持ちで周囲からいじめられるリリーを必死で守ってくれていました。
しかし、マイキーはとあるいざこざが原因で長い間、行方不明で音信不通になっていました。
リリーは母親の死をきっかけにマイキーを探すことを決意します。
自分自身との付き合い方
大体のどの辺りにいるかの検討はついたものの、マイキー探しは想像以上に難航します。
そして、やはりてんかんの症状が行く先々でリリーを襲い、その度にマイキー探しはストップしてしまいます。
てんかんの薬を処方してもらいに医者に出向くも、長いこときちんとした検査を受けていないリリーは、同じ薬を飲むことを咎められます。
検査をして新しい薬を飲むように諭されるのですが、薬が変わると体の不快感や幻覚などの辛い症状が出るため、必死でそれを拒み同じ薬を処方してくれるように頼みます。
それは、もうこの病気は治らないという諦めも絡まり、自分自身ををどこまでも孤独の淵へと追いやってしまっているかのようです。
絡まりゆく光の中で
エレクトリシティというタイトルが示すように、光がちりばめられたような効果が巧みに使われ、斬新な映像の元にリリーのその姿が描かれていきます。
随所に挟み込まれるその実験的な映像は、リリーしか見ることのできないその光景を、我々にも垣間見せるかのようです。
途切れる記憶、その度に行き止まってしまう物語、果たしてリリーは無事にマイキーを見つけ出すことができるのでしょうか。
その光と音の果てで、新たな記憶の先を掴むリリーの姿を、我々は気づけば画面越しに願っています。
途切れる記憶が語ること
途切れる記憶の中で、必死で未来を掴もうとするリリーの姿は、感動と希望を与えてくれます。
その風景が語ることは、決して諦めないとか、悔しさをバネにとかいった、根性論めいた説教ではありません。
それは誰しも自分自身の特性を理解し、きちんと向き合っていこうという、前向きで未来のあるメッセージが感じ取れるような気がします。