戦争がもし突然始まったら…『わたしは生きていける』が描くとてつもないリアル

冒頭からグランジミュージック全開で、汚れた加工の文字をあしらったオープニングの演出。そして登場する主人公は染めた金髪に濃いめのアイライン、ダメージ加工の洋服に鼻にピアス、派手なヘッドフォンをした10代の少女である。

とても戦争をテーマにした映画とは思えない始まり方に意表を突かれる。

しかし現在の世界でもし戦争が起こったら…この映画で描かれる出来事は少しも突拍子な事ではないのではないだうか、とてつもないリアリティを持った物語なのかもしれない。

あらすじ

終末世界で生きる少女の青春を色鮮やかに描いた。出生時に母親を亡くした少女デイジーは、まだ見ぬ3人の従兄弟とひと夏を過ごすため、単身イギリスへと渡る。複雑な家庭環境のせいで反抗的になっていた彼女は、純真な従兄弟たちとの交流のなかで明るさを取りもどしていき、やがて長兄エディと恋に落ちる。ところが、ロンドンで発生した核爆発テロをきっかけに、第3次世界大戦が勃発。戒厳令がしかれるなか、デイジーたちは軍に拘束されて離ればなれになってしまう。エディと再会するために軍の施設を脱出したデイジーは、荒れ果てた世界へと足を踏み出す。
引用:映画.com

キャスト・スタッフ紹介

  • 制作国:イギリス
  • 公開年:2013年
  • 上映時間:101分
  • 監督:ケビン・マクドナルド
  • キャスト:シアーシャ・ローナン、トム・ホランド、ジョージ・マッケイ、ハーリー・バード、ダニー・マケボイ

周りが気づかない繊細さ

自分の心の声と人は格闘する、何か行動をするときも止まっているときも思考は常に動いている。そしてそれは人が古い概念に疑念を覚え、新しい価値観取り入れようとする時なおいっそう強くなる。

成長する伸び代が大きいいほどその影響力は大きい、すなわちティーンエイジャーと言われる年代は、特にその心の声がとても強い年代とも言えるかもしれない。

外の世界と中の世界、自分にしか分からない微細なその対比に悩まされ、もがきながらも成長していくのである。そしてこれはどの年代に共通する、自分自身が存在するが故の心の響きなのであろう。

自分の視点で世界を見るという事

人は誰しも自分の視点で世界を見ている、それは主観や客観を超えた、ありとあらゆる自分への影響力を集約させた答えが、いわゆる視点として自分自身のスクリーンに映し出されるのである。

例えば、好きな本やいつか観た映画、大好きな音楽や昔の大切な思い出、そのもの達が縦横無尽に影響しあって自分自身の思考や、物事はどうあるべきかといったいわゆる思想や、眼に映るものがどう見えるかという視点が出来上がっていく。

むしろ初めから自分なんてものはなく、空っぽの入れ物のようなものがそこにあるだけで、そこに育った環境や置かれた立場、見聞きしたものや影響されたもの、心に響いたものなどが絡み合って、自分自身だと思っているものを形作っている、人間なんて誰しもそんなものだ。

生まれた場所から遠く離れて

主人公の少女デイジーは夏休みを従兄弟と過ごすため、自身の住むアメリカを離れてイギリスの地の降り立つ、10代の少女が一人で飛行機に乗って、見知らぬ土地に行くというのはとてつもない不安や緊張があるはずである。

しかしデイジーはヘッドフォンでグランジミュージックを爆音で鳴らし、イギリスの空港に降り立ち、まるで傲慢なハリウッドスターのように、我が物顔で税関を通り抜けて行く。

時は終末世界、第3次世界大戦が勃発するかもしれないという状況の空港は、緊迫状態であちこちにミリタリー姿の軍関係者が散りばめられているが、デイジーの目にはそれさえも映らない、自分自身にとっては今はそれはどうだっていいことだからだ。

初めて会う少しだけ血の繋がった人達

従兄弟というなんとも微妙な関係性、他人ではないが家族でもない、そしてむしろ他人と話すよりも緊張するし気を使う、どこまで自分を出したらいいのか分からず、微妙な空気が流れてしまう、従兄弟や親戚と会う時はだいたいみんなそんな感じになるのではないだろうか?

デイジーも初めて会う従兄弟達と特に打ち解ける事ができず、自分自身の殻に閉じこもったまま、最初はその時間を過ごしていく。

しかし次第に従兄弟達はデイジーが抱えている事を察知し始め、バターを溶かすようにゆっくりとその関係性をなじませていく。

永遠に続いていくような幸せ

母親は昔に亡くなり、父親から放任され育てられているデイジーと、父親はおらずに仕事に夢中でほとんど家に帰ってこない母親、放ったらかしにされている子供達という共通点を持つ、従兄弟とデイジーはぎこちないながらも、お互いの気持ちを分かりあい、美しいイギリスの田舎の風景の中で、はしゃぎ遊びまわり、青春を謳歌していく。

「これがこのまま一生続けば良いのに」という、夏休みに誰もが経験し感じた事がある、いわゆるあの無敵でなんとも言えない幸せな感覚が蘇ってくる。

しかしそれは突然始まる

ある日いつものように草原で従兄弟達とはしゃいでいるとそれは突然やってくる、けたたましい爆音が鳴り響き、そのすぐ後に雪のようなものが降り始める。急いで家に戻ってテレビをつけると、ロンドンで発生した核爆発テロをきっかけに、第3次世界大戦が勃発したというニュースが流れている。

戒厳令がしかれるなか、デイジーと従兄弟達は不安にかられながらも、愛着のある我が家を離れようとはせず、納屋に移動し子供だけの夢見心地の生活を続けようとするが、そんな生活も長続きはせずある日軍に拘束され離れ離れにされてしまう。

夢見心地の日常から突然戦争という非日常の暗く先の見えない、残酷な世界に引きずり込まれるのである。

私たちが暮らす場所

デイジーは従兄弟達と離れ離れにされ見知らぬ街で軍の仕事に奉仕しながらの生活を余儀なくされる。

しかしデイジーは希望を捨てずに、あの従兄弟達と過ごした我が家に帰る決意をする。そして銃声が爆撃音が鳴り響く中、遠く離れた場所までの旅が始まる。

果たして少女はどんな思いで戦争と対峙し、その道のりを歩んでいくのか。

もし自分の周りで戦争が起きたら

この作品のすごいところは、戦争が主人公の目線のみで描かれているところである。物語が進んでも主人公が見聞きした事柄のみで戦争が映し出されていく、戦争の背景の説明や他の場所での戦闘シーンの差し込みなどは一切なく、主人公の視点や身の回りだけにファーカスし、主人公が目の当たりにする戦争をただただ描いていく。

我々視聴者側もこの映画の中の戦争については、主人公が持っている情報と同じ情報しか持っていない、つまりこの映画の中の戦争に対して観る側と主人公が見ている光景は、まったく同じということになる。

この主人公の自分視点のみでの描き方が、戦争に対してとてつもないリアリティと没入感を持たせ、観る者に「もし自分の周りで戦争が起きたら…」と考えざるを得ない仕組みを作っている。

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日常と悲劇が交差する

10代の少女の目線を通して、圧倒的な自分視点で描かれる戦争という悲劇。

戦争なんて起こるわけないと思っているこの日常に、それが突然やってきてしまったら…。この映画の持つ自分視点に我々は自分自身を当てはめらざるを得ない。

そして、誰しも他人事とは思えないその光景に、決して目を伏せる事はできなくなる。

それでもわたし達は生きていかなければならないのである。