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心理戦という芸術
精神科の病棟を舞台に1人の人物の失踪を巡って、繰り広げられる心理戦を描いたサスペンスです。
監督としてもその才能が認められている、グザビエ・ドランが俳優として出演しています。その独特のたたずまいが作品にある種の説得力をもたらしています。
人が織りなす芸術ともいうべきこの心理戦から目が離せなくなります。
あらすじ
ある日、精神科医が失踪し、患者のマイケルという青年だけが手がかりを知っていた。院長のグリーンはマイケルから事情を聞こうとするが、マイケルは巧みな話術でグリーンを罠に取り込み、翻弄していく。
引用:映画.com
キャスト・スタッフ紹介
- 制作国:カナダ
- 公開年:2014年
- 上映時間:100分
- 監督:シャルル・ビナメ
- キャスト:グザビエ・ドラン、ブルース・グリーンウッド、キャサリン・キーナー、キャリー=アン・モス、コルム・フィオール
予告編
彼はどこへ消えたのか
とある精神科病棟で精神科医が失踪する事件が起きます。
失踪したローレンス医師が担当していた、マイケルという患者がだけが真相を知っているということを察知した院長のグリーンは、マイケルから真相を聞き出そうとします。
マイケルをの性格をよく把握している看護師長のスーザンを部屋の外で待機させ、院長室に2人きりでマイケルと話をします。
しかし、グザビエ・ドランが演じる患者のマイケルが非常にくせ者で、普通に知っていることを話そうとはせず、まるでゲームのように巧みな話術で、グリーンを翻弄して行きます。
すべてを茶化しはぐらかすマイケルのその態度にグリーンは苛立ちや動揺をあらわにしながらも、なんとから真相を突き止めようとマイケルに向き合おうとしていきます。
まったくと言っていいほど失踪の真相を話そうとせず、象やオペラなどまったく関係ないと思われる話をマイケルはし続けます。
その人を翻弄する態度の裏には一体何が隠されているのか、深読みする隙も与えないくらい、巧みな話術の心理劇が繰り広げられていきます。
そこには独自の緊張感がそびえ立ち、狂気というある意味恐ろしさをはらんだ状態と、冷静さが成立するギリギリの状態がせめぎ合い、密室という空間から異次元の世界を描き出すようなめまぐるしい物語です。
やがてマイケルは真実を話す代わりにある3つの条件を提示します。
- 自分のカルテを読まないこと
- ご褒美にチョコレートをくれること
- 看護師長をこの件から外すこと
グリーンはその条件を受け入れるのですが、それでもマイケルの巧みで入り組んだ会話から抜け出すことはできません。
しまいには、マイケルはローレンス医師から性的虐待を受けていたという衝撃の告白まで飛び出してきます。
象への執着
映画のタイトルにもなっているエレファント、この象という存在がこの映画の重要キーワードなのですが、象という生物は独特です。
その大きさは動物界のおいても稀なサイズで、長い鼻やを持つ個性的なフォルムや、ゆっくりとした動きなど、他の動物にはない特徴を多く兼ね備えています。
マイケルはこの象という存在にとてつもなく執着しています。
印象的だったのは「象は人間以外の生物の中で唯一涙を流す」ということを話すシーンです。さらに象には感情めいたものがあり、家族や仲間を失えば人と同じように悲しむと語ります。
象の存在は人間にとっても昔から特別であったように思います。
英語で”see the elephant”という表現があります。これは”世の中を見て世間の経験を積む”という意味らしいのですが、昔はイギリスやアメリカの英語圏の人々はほとんど象を見たことがなかったそうです。
そこで象を見たことがある人は”世の中をたくさん見てきて様々な経験を積んだ人”と捉えて、こう言った表現が生まれたと言われています。
これはイディオムという2つから3つの英単語をつなげて、本来の単語とは違う表現をするという、英語独特の表現方法なのですが、elephantという単語にまつわるイディオムは他にもいくつか存在します。
せっかくなので他にも代表的なものを3つほど紹介したいと思います。
- “elephant in the room”これは”見て見ぬふりをされた問題”という意味で、部屋に象がいたら絶対に見過ごすことはできないという発想からできた言葉です。
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“pink elephants”こちらは”酒に酔っ払って幻覚を見る”という意味で、ピンクの象なんて存在するわけないものを見てしまうという発想からできた言葉らしいです・
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“white elephant”これは”無用の長物や厄介な持ち物”という意味です。神聖なものとされていた白い象をとある国の王様が、滅亡させたい他の国に贈ったのですが、神聖な白い象を飼育するために莫大な費用がかかってしまい、その国が破綻してしまったという逸話からきている言葉です。
このように言葉が作られた歴史を見ても、人間にとっていかに象が特別な存在だったかが分かります。
しかし、グリーンはマイケルの言葉に翻弄されっぱなしです。このままでは”white elephant”ならぬ”無用の長物”になりかねない勢いです。
果たして事件の真祖を暴くことはできるのでしょうか。
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