ソリッドでエッジの効いたミステリー『ドラゴン・タトゥーの女』はまさにサスペンスのお手本

「最初から最後まで目が離せない」とはまさにこの映画のためにあるような言葉である。気づけば考え事をする時間さえもなく、この物語に我々は夢中になっている。

まさにサスペンスともいうべきこのエッジの効いた展開に、すべてを持って行かれてしまうのである。

あらすじ

経済誌「ミレニアム」の発行責任者で経済ジャーナリストのミカエルは、資産家のヘンリック・バンゲルから40年前に起こった少女ハリエットの失踪事件の真相追究を依頼される。ミカエルは、背中にドラゴンのタトゥをした天才ハッカーのリスベットとともに捜査を進めていくが、その中でバンゲル家に隠された闇に迫っていく。
引用:映画.com

キャスト・スタッフ紹介

  • 制作国:アメリカ
  • 公開年:2011年
  • 上映時間:158分
  • 監督:デビッド・フィンチャー
  • キャスト:ダニエル・クレイグ、ルーニー・マーラ、クリストファー・プラマー、スティーブン・バーコ、ステラン・スカルスガルド

圧倒的スリリングさの持つ意味

圧倒的なスリシングさは現実のそれをも凌駕する、人が作り出したシネマという媒体で時にそれはリアルに奇跡的な質感を生み出す。あり得ないこともあり得ることも、一緒くたにしてしまうほどのパワーがそこにはある。

それは時間が持つトリックをふんだんに利用した、ストーリー展開という魔術が持つ魅力なのかもしれない。

過去と現在の間で

サスペンスやミステリーは過去に起こったことの謎を、今現在においての解釈で解き明かしていくというものである。しかしこの過去に起こったことにおける、入り組んだ迷宮的謎が厄介にもなかなか未来への扉を開かせてくれない。

そこに横たわった事実に対して、この謎こそが猛烈な邪魔をし、真実へと入り込むことを拒否するのである。

この物語において謎を解き明かす役割の主人公ミカエルも、この過去に仕掛けられた入り組んだトリックにより、迷宮への道を余儀無くされてしまう。

あるべき姿の救世主

そこでもう1人の主人公リスベットに白羽の矢が刺さり、この迷宮に入り組んだ物語は急速に、解決へと向かい展開していく。

リズベットはタイトルにあるように、インパクトのあるドラゴンのタトゥーが入っている、それどころか全身黒ずくめの、ゴスなパンクファッションで身を固められていて、どちらかといえば紳士的な佇まいのミカエルとはどう考えてもミスマッチである。

しかしこの対比こそ、この物語にあるべき姿なのかもしれない。

パンクの持つ力

パンクは最先端ファッションともてはやされた時代もあったかもしれないが、もはやパンクは時代遅れとも言えるファッションである。

何度かリバイバルは果たし、その都度その時代に見合ったムーブメントやカルチャーを発信はしたものの、どちらかといえば今はもうオールドスクールなファッションであり、使い古された文化ともいうべきものになってしまっている。

そう時代の方が斬新になりすぎたのである。時代がパンクの持つ反骨精神や過激さを上回ってしまったのである。

しかしそんなパンクファッションに身を包んだ1人の少女がこの物語では過激に動き回る。

そして物語は新たな局面を迎え、クライマックスへと向かっていく。

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アンバランスさの持つ魅力

ミカエルとリスベットが放つアンバランスさのように、サスペンスとパンクはアンバランスである。そのアンバランスにつけ込んでくるのがこの映画のずるくて魅力的なところである。

いわばサスペンス・ミステリーの王道的に物語は進行する。見るものをハラハラさせ、次の展開を大いに期待させる演出。

そしてデビッドフィンチャーお得意のスピーディーなストーリー進行と画面展開に、いつの間にかやられてしまっているのである。

まさにサスペンスのお手本的その展開に、我々は画面に釘付けにならざる得ない。