『アザーライフ 〜永遠の一瞬〜』新たな体験の創造、その一瞬の中にある永遠

出典:IMDn

永遠の先を目指して

時間を凝縮させてほんの数秒で、あらゆることが体験ができる薬を開発した女性、しかしその使い方の裏には女性の苦悩が垣間見え、それを巡り周りからは疑いの目をかけられることになります。

人間の脳の可能性に期待を抱かせると同時に、科学が発展することにより生じる恐怖も感じさせる作品です。

日本では劇場未公開作品でありながら、かなりの見応えのある作品です。

あらすじ

長い時間を凝縮させ、短時間で実体験ができるようになる薬を開発したレン。ところがこの可能性を秘めた新薬の使い道について共同開発者ともめてしまい…。
引用:Netflix

キャスト・スタッフ紹介

  • 制作国:オーストラリア
  • 公開年:2017年
  • 上映時間:95分
  • 監督:ベン・C・ルーカス
  • キャスト:ジェシカ・デ・ゴウ、T・J・パワー、トーマス・コックレル

新たな体験の創造

Photo by:IMDb

主人公の女性レンはいわゆるバイオ系ITベンチャー企業の経営者です。

自身が開発した数秒間の間に数時間の現実と見紛うほどの体験ができる薬。それは眼球に点眼して使う点眼薬の形態をとりながら、プログラミングで生成された生体ソフトウェアです。

人の人体や脳で意図した動きを実現させるため、バイオ技術とIT技術を融合させ作り出された、新しい記憶を構築する薬の形態をとったこのソフトウェアを、レンの勤めるスタートアップベンチャーはあと数日で発表するという局面を迎えています。

それは新たな”体験の創造”であるとレンは自信を持っており、その秘めた未知なる可能性に想いを巡らせ奮闘しています。

一瞬の中にある永遠

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人は誰しも時間が足りないと感じがちです。

もっと時間があればあんなことやこんなことがたくさんできるのにといった具合に、現実の時間の少なさを嘆くこと、それは忙しい生活を送る現代人にはつきものです。

その現実の持つ時間の問題を解決する手段としても、レンの開発するこの薬は有効です。

仕事前にボートに乗ったり、昼食時にスノボを楽しんだり、そして夜はダイビングを堪能したりといった具合に、時間にとらわれず自由にアクティビティを堪能できたらそれはもう夢の世界です。

そしてそれがいわゆる疑似体験ではなく、脳に新たな意識を構築させることにより、本当の体験と何も変わりがない体験が実感できるというのですから驚きです。

レンは共同経営者のサムや会社の仲間たちと共に、その一瞬の中にある永遠にまさしく命をかけています。

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そして、あと数日後にはこの革新的な技術を世間に発表することになっています。

その一瞬にかける思い

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レンには過去に海での事故により、意識不明で寝たきりになってしまった兄の存在があります。兄をの意識を取り戻したいという執念が、この薬の開発の原動力になっていました。

レンには兄の意識を取り戻すための一つの考えがありました。それは寝たきりの兄に疑似的に事故時の記憶と違う夢を見せることができたら兄の意識は戻るという考えでした。

自ら作り出した薬を会社や仲間に内緒で、本来の開発用とは別に手を加え独自のアップデートで強力なものにし、面会時に病院の目を盗んでは兄に投与し脳波を記録していました。

しかし、このレンの目論みが仇となりある事件が勃発してしまうことから、事態は思わぬ方向へと向かいます。

さらに、この薬が持つ特性の一つである意識の中にとどまるという特性を利用し、共同経営者のサムはあることを裏で企てていました。

その先にあるのはどこまでも幸せが広がる夢の世界なのか、それとも残酷なまでの悪夢なのか。

果たして永遠の中にある一瞬が描き出すのはどのような物語なのでしょうか。

仮想現実という現実

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現在流行しているVRから分かるように、現実の世界でも仮想現実は、仮想とは言えない領域まで技術的には来ている気がします。

あのような少し大きめのゴーグルを被ったぐらいでと最初は思いますが、VRを体験した人は皆現実と変わらないとか、本物の体験をしているみたいだと口を揃えて言います。

それはいかに人間が脳というものに依存しているかと言えるのではないでしょうか。

認識する、意識する、記憶する、思い出すといった行為は全て脳があるからこそ実現できます。つまり現実というものは脳によって認識されることにより、そこに現実がある実感できるということです。

ということは仮想的な出来事であってもそれが本物と見間違うような出来事であれば、それを現実だと脳は認識するということになります。

この映画で描かれるように、夢の中で現実と同じ体験ができ、かつそれが自分がやりたいことだったり、実現したいことだとしたら、誰しも少しは体験してみたいと思うのではないでしょうか。

しかもそれが現実の世界ではほんの数秒でありながら、体感時間は数時間といった具合であれば興味のそそる話なのは間違いないです。

夢の中で夢が叶えられ、それが現実と何も変わりがないとくれば、それはもはや現実の体験としか言いようがありません。

一瞬がもたらすもの

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時間の感じ方や捉え方は、その時置かれた状況によって変わってきます。

しかしその時間をコントロールでき、新たな意識を構築できるという夢のような話を軸に、科学や技術の進歩がもたらす可能性をどう捉えるのかを考えさせられる非常に深い作品でした。

一瞬がもたらす新たな意識の改革を、この映画を通してぜひ体験してみてください。