知らない街にひとりぼっち『ロスト・イン・トランスレーション』が映し出す異国

知らない街に1人取り残され言葉や文化の違う中で感じる孤独感。なんとなく来てみたものの何とも繋がりを感じることができないという喪失感。

東京の町並みを舞台にそんな孤独や不安に打ちひしがられながらも、異国の中に溶け込もうとする男女の風景を描いた美しい作品である。

あらすじ

CM撮影のために東京にやってきたハリウッドの中年男優。カメラマンの夫に同行して東京にやってきてホテルの部屋で過ごす若い妻。見知らぬ異国の街で出会った、年齢も性別も違う2人が夜の都市をさまよう。
引用:映画.com

キャスト・スタッフ紹介

  • 制作国:アメリカ
  • 公開年:2003年
  • 上映時間:102分
  • 監督:ソフィア・コッポラ
  • キャスト:ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソン、ジョバンニ・リビシ、アンナ・ファリス

異国に取り残されて

知らない異国で取り残された時まず何をするだろうか?

旅行で知らない土地に行ったのならば大概の時間は予定で埋まっているが、しかしなんらかの理由で見知らぬ土地で取り残されてしまった場合、何もなくただそこにいるという状況が出来上がってしまうのだ。

つまりが異国に1人が取り残されるという行為により、観光という枠組みから外れてしまう、それは孤独以外の何物でもない。

異国にたまたまやってきてしまった孤独な人たちはつまりは迷子である。場所だけでなく言葉や人や愛情といった全てから取り残されてしまうのである。

ロスト・イン・トウキョウ

主人公のシャーロットはまさに孤独の中にいる、 カメラマンの夫に同行して東京にやってきたのだが、夫は仕事で忙しくホテルの部屋に置いてきぼりになり一人で時間を持て余している。

夫にほっとかれているという相互関係の喪失から、きっぱり観光モードに切り替えることもままならない、倦怠な空気の中少しづつ風景の中に溶け込もうと、近辺を散策し異国に馴染もうとしていく。

そして唐突に新幹線に乗り京都に向かう、エールの「Alone In Kyoto」をサウンドトラックに車窓から見える富士山を眺め、京都に向かっていく。京都では神社や仏閣を周るのだが、偶然神前式と遭遇し立ち止まりその光景に見入ってしまう。

それまでに自分の中になかった文化がすっと体に馴染んでいくような、孤独と美しさが絡み合うとても印象的な場面である。

なんとなく来てみたという感覚

CM撮影のために日本にやって来たハリウッド俳優のボブ・ハリスもそんな異国に取り残されている1人である。

高額のギャラにつられて来てはみたものの言葉も文化も違う環境で、なんとも言えない孤独と同居しながら過ごしている。

撮影の現場ではディレクターの言っていること通訳がきちんと訳しているか不安に思いながら仕事をこなし、撮影後はやたらとテンションの高い司会者が進行するテレビ番組にゲスト出演して、なんとも言えない疲れを覚える。

自主的な目的がなく来た異国というのもこれまた迷子になりやすいシチュエーションなのかもしれない。

孤独の共有

そんな2人がホテルで何度か顔をあわせるうちに言葉を交わすようになる。そしてお互いの孤独を共有し、ネオン輝く東京の夜の街に溶け込んでいく。

寿司屋から深夜のクラブ、見知らぬ人たちと行くカラオケボックスなど、まさにそこにしかないきらめきがそこにはある。そんな風にトウキョウの夜を駆け巡り、目に見えない何かを共有しあっていく。

それは傷の舐め合いのようなひと時の癒しではなく、永遠に心の片隅で輝き続ける宝物のようなものである。

孤独に染み渡るサウンドトラック

マイ・ブラディ・バレンタインやジーザス&ザ・メリーチェインのシューゲイザーサウンドや、エールやスクエアプッシャーなどのエレクトロニカ系のサウンドなどが、孤独の内側にある”ここではないどこか感”を増幅させる。

しかしそれはなぜかとても心地よく、居心地の良さが映画の隅々まで充満している感じがする。そしてケヴィン・シールズがこの映画のために書き下ろした4曲の楽曲も素晴らしい。

極め付けはエンドロールで流れるはっぴいえんどの 「風をあつめて」だろう、まさに非の打ち所のないサントラである。

このサウンドトラックを堪能するだけでもこの映画は観る価値があると言える。

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そして少しのきらめき

全体的に落ち着いたトーンでありながら全体を覆い尽くす切なさ。

まさにこの映画は限定的ではありながら、人が皆どこかで味わうであろう孤独感を映画を通して感じさせてくれる。

そして何かを感じることで我々は生きている事や世界の美しさを実感する。