圧倒的名作『たかが世界の終わり』が描く儚さの先にあるもの

グザヴィエ・ドランの最新作『たかが世界の終わり』を観てきました。自分はとても大満足の1本でした。

相変わらずのカメラワークとDJセンスは言わずもがな、光の扱いが今までになく美しく、何度もセリフを追うのを忘れて映像に見惚れてしまいそうになりました。

2016年度のカンヌでグランプリを取るだけはある、緻密に計算された展開と、素晴らしい役者陣の演技、今年必見の1本だと思います。

ネタバレしていますので、これから観る方はご注意ください。

あらすじ

「Mommy マミー」「わたしはロランス」などで高い評価を受けるカナダの若手監督グザビエ・ドランが、劇作家ジャン=リュック・ラガルスの舞台劇「まさに世界の終わり」を原作に、自分の死期が近いことを伝えるため12年ぶりに帰郷した若手作家の苦悩と家族の葛藤や愛を描き、第69回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた。若手作家のルイは自分がもうすぐ死ぬことを知らせるため、長らく疎遠にしていた母や兄夫婦、妹が暮らす故郷へ帰ってくる。しかし家族と他愛のない会話を交わすうちに、告白するタイミングを失ってしまい……。
引用:映画.com

キャスト・スタッフ紹介

  • 制作国:カナダ・フランス合作
  • 公開年:2017年
  • 上映時間:99分
  • 監督:グザビエ・ドラン
  • キャスト:ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥー、マリオン・コティヤール、バンサン・カッセル、ナタリー・バイ

グザビエ・ドランはカンヌ国際映画祭のグランプリを若干27歳で獲得した今をときめくの天才監督です。

「エディット・ピアフ 愛の讃歌」のマリオン・コティヤール、「アデル、ブルーは熱い色」のレア・セドゥー、「ハンニバル・ライジング」のギャスパー・ウリエルらフランス映画界を代表する実力派キャスト共演が実現しています。

生まれた場所に帰るということ

浮き足だす母と妹、それとは対照的な兄とその妻、そして主人公は帰ってくる、あることを伝えるために。

帰宅した主人公のルイにお構いなく、兄アントワーヌは喋り出す、己の日頃のフラストレーションやストレスを発散するかのごとく喚き散らす。

勝手に出て行って12年ぶりに帰ってくる野郎に優しい言葉、ましてや「おかえり」さえ言ってやる甲斐性は俺にはねえんだよと、とにかく玄関で喚き散らす。

「ただいま」をいう隙なんてありはしない。「ただいま」ってまず言えよって後で怒るんだろうな…「ただいま」を言えないのはあなたのせいなのに…

上記が家族と主人公ルイが12年ぶりに再開するシーンのくだりである。ここから分かる様に兄アントワーヌはいわば12年の間に、すっかり父親化ししてしまっている。それもそうだろう父親はとっくの昔に亡くなり、母マルティーヌと妹シュザンヌを一人でずっと守ってきたのだから。

それに人としての役割をきちんと果たすべく嫁をもらい、2人の子供も設け、家族と責任を背負っている。どんな理由があるにせよ12年間一度顔も見せなかったくせに、今更帰ってきた弟など知ったことか、そう思うのも無理もない。

とりあえずこの中に救いはあるのか

そんな風に主人公は救いを求める、誰にも悟られない様に微かな優しさを探す。自分が悪いと分かっていてもこの場ですぐに謝るなんで無理だ、ほんの少しでいい安らぎが欲しい一瞬でもこの瞬間に。

そこで兄の妻カトリーヌが聖母マリアのごとく、優しい眼差しとともに安らぎの言葉を与える、しかしそこにもやはり戸惑いは見え隠れする。挨拶のキスさえもなぜか今日は上手くできない、すべてがぎこちない。

浮き足だっていた妹と母も次第にこの空気に飲まれていく、しかしそれはあらかじめ分かっていたことなのかもしれない、人のわだかまりを時が解決することは稀だからだ。

こんな風にすべてがままならぬまま物語はスタートする。ここまでまだ玄関先での出来事である。

光だけでは映し出せない、闇があるからこその美しさ

“光の存在は闇があるからこそ証明される、暗闇がなければ光にも意味がない”

主人公ルイは大きな秘密を抱えたまま、再会の多くの時間を過ごしていく、なんとか応接間に移動し母が作った前菜にありつこうとするのだが、そこでも口論が待ち受けている。お前の抱えてる事など知ったことかと兄アントワーヌはキレまくる。

救いに見えた兄の妻カトリーヌとも本音で語り合うことなどできるわけもない、だが一瞬だけ通じ合う瞬間が訪れる、それは気のせいなのかもしれないし、思い違いかもしれない、だがその一瞬で少しだけ全体の空気が澄んでいく。

まるで闇の中に一筋の光が射す様に。

そして家族との対話

ここから妹シュザンヌ、母マルティーヌ、兄の妻カトリーヌ、兄アントワーヌ、一人一人と対話していく、それぞれの想いがぶつかりったり、ケアしあったりしながら、存在や知性にまみれた人間の繋がりが表現されていく。

時には暗く、時には光をふんだんに取り入れた画面の中、お互いにディスカッションを繰り返す、そこには大勢でいる時とは全く違うそれぞれの想いや気持ちが見て取れる。

納屋の光の中での母と子の姿は感動のハイライトシーンとも言えるだろ、狭い納屋でタバコの煙にまみれて母は息子への愛を表明する。抱えた秘密さえ無意味になってしまうくらいそれは美しい。そして些細なだがとても重要な約束を交わす。

世界が終わるということを伝える義務

そして最後のデザート時間、主人公は自分お終わりが近いことを果たそうとするのだが、その前に母との約束をきっちり果たす、そして少しだけ家族の風景がそこに現れる。

それから、自分自身の世界の終わりを告げようとするのだが…
兄アントワーヌはそれを許さない、これでもかとエンジン全開でここでも弟を罵倒する、それは優しさか鬱憤か。

いつだってそれははあっけない、本当にたかがそれくらいのことなのかもしれない「世界の終わり」なんて。

グザビエ・ドラン監督の関連作品を見るなら、U-NEXTの無料お試し期間を使おう!

『たかが世界の終わり』を観て、グザビエ・ドランの他の作品も観たくなった方にうれしいお知らせ。

いまならU-NEXTで「Mommy/マミー」や「トム・アット・ザ・ファーム」や「マイマザー」などグザビエ・ドラン作品を鑑賞することができます。

31日間の無料お試し期間があるので、こちらを活用すればU-NEXTで約12万本の動画が31日間無料で楽しめます。

また、ダウンロード機能もあるのでスマホやパソコンに取り込んで、通信速度を気にすることなく外出先でも映画を楽しむことも可能です。

しかも、今ならU-NEXT内の新作映画や人気作品に使える600円分のポイント特典が付いてきます!

スマホアプリも使いやすいのでオススメです。

日本最大級のビデオオンデマンド<U-NEXT>今なら無料トライアル実施中!



映像もストーリーも演技も音楽もすべてに隙がない作品

細かい表情で見せる役者の演技から、それを受け止めるかの様に時に実験的に時に華麗に描き出す映像美。

フランスの劇作家ジャン=リュック・ラガルスの舞台劇「まさに世界の終わり」を原作にしています。

パンフレットやチラシの写真やアートワークも素晴らしいです。

そして何と言っても予告編でも使われいる、エンディングテーマのMobyの「Natural blues」がはまりまくっています。歌詞の内容からメロディーや細かい音までも映画の世界観にぴったりです。

言うなればトレインスポッティングでのUnderworldの「Born Slippy」ぐらいはまっています。Mobyやその周辺の音が好きな人にもぜひ観ていただきたいです。

サントラもかなりオススメです。

「たかが世界の終わり」美しくもはかない、そして温もりとヒリヒリさが同居した素晴らしい作品です。