刹那的世界の中で恋の煙は宙に舞う『ストラッター』がそれでも奏でるロックンロール

出典:amazon

白黒の映像がスタイリッシュな青春ロックンロールムービーです。

恋に破れ心に痛みを追ったバンドマンの主人公が、音楽や様々な出会いを通して自分を取り戻していく再生の物語です。それは時には情けなく時にはクールに、まるで転がる石のようにつづいていきます。

あらすじ

スタイリッシュな青春ロックムービー。恋人から突然の別れを告げられた上にバンド解散の危機にも陥ったロック青年の苦悩をユーモラスに描く。人気オルタナティブ・ロックバンド「ダイナソーJr.」のJ・マスシスがオリジナル楽曲を手がけ、カメオ出演もしている。
引用:映画.com

キャスト・スタッフ紹介

  • 制作国:アメリカ
  • 公開年:2012年
  • 上映時間:87分
  • 監督:カート・ボス、アリソン・アンダース
  • キャスト:フラナリー・ランスフォード、エリーズ・ホランダー、ダンテ・ホワイト=アリアーノ、クレイグ・スターク、サラ・アシュレイ

刹那が物語る事

音楽や芸術は時に儚く脆いものだと思います。

その刹那的な有様は時にとてつもなくクールですが、時にとてつもなく無様な形相さえ見せつけます。それは今日という日の今この瞬間を切り取った瞬間的美的価値が織りなす、芸術的表現手段の極みなのかもしれません。

転がりつつけることにより形を変える石のように、真の強さは保ちながらもどこまでも自由でそしてどこまでも不自由でです。

音楽こそ自由であるべき

何かを犠牲にしてまで得るものなどあるべきではないのではないかと思います。

楽しいことは楽しい、悲しいことは悲しい、そういった摂理がそこにあるだけで、夢や希望を重ね何かを犠牲にするほど馬鹿げたことはありません。

しかし、時に音楽や芸術、特にロックが置かれる立場はなぜか自己犠牲を伴い、音楽を楽しむといったことからはかけ離れた作業を強いられてしまうのではないでしょうか?

いつか成功して見返してやるといった、お涙頂戴の自分物語はもう古すぎるし必要がないのです。

誰もが賢く裕福であるべきで、夢や希望のせいで不幸になってる暇などなく、何よりも人生を楽しむべきなのです。いわば自分自身は自分自身を幸せにする義務があるのです。

成功こそが正義ではない

要するに成功などしなくても音楽を鳴らし続けることは可能ということです。つまりは好きなことを続けられる環境を自ら作り出し、いつまでも楽しく音を奏で続けることが何よりも大事なのです。

音楽や芸術の持つ壊れやすく脆いという刹那的な側面を、アップデートする時が来てるのではないでしょうか?

刹那の中でぶっ壊れるというデモンストレーションはパンクが盛大にやってくれたので、その他の音楽が今さらそれをやる必要はもうないのです。

青春とロック

ストラッターという映画は言わずもがなの、青春ロックンロールムービーです。

青春ど真ん中でロックンロールを奏で続ける主人公ブレットは、冒頭からいきなり彼女に振られてしまいます。夢を追い続けるが故に愛を失うといったよくあるパターンではあるのですが、ブレッドはとても愛していた彼女を失いバランスを崩しボロボロになってしまいます。

感傷に浸るのはロックンローラーの真骨頂ですが、いつまでもそういうわけにはいきません。ブレッドは心に傷を抱え辛いながらもなんとか再生しようと、新環境に身を置いたり、ひらすら曲を作ったりして感傷的世界からの脱却を少しづつではありますが図っていきます。

そして砂漠への終わりなき旅

そしてそんな気持ちを引きずったまま、はるか遠くの砂漠の果てへロードームービーが始まります。

それはありきたりな傷心旅行とは違う、その中で確実に何かが変わっていくような、美しい変化の始まりであり刹那的な物事からの脱却の旅路です。

果たして彼はその目に何を写し、何を感じ取り前へと進んでいくのでしょうか?

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楽曲が素晴らしい

映画の中で流れるオリジナル楽曲はすべて、人気オルタナティブ・ロックバンド「ダイナソーJr.」のJ・マスシスが手がけています。

なんとカメオ出演まで果たしてくれています。

彼の作る特有のギターサウンドは感情が埋もれていくような、爽快感にも似た気持ち良さが溢れています。

いつだってクールにいこう

最後まで見終わった後には、何があっても前を向いて歩いていくそんな颯爽としたかっこよさを、この映画のすべての登場人物から感じます。

それはひとときの儚さとは違う、芯の通った喜びあふれる世界観を目の前に提示してくれます。