善と悪のはざまで『ボーダーライン』その境界線の向こう側

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アメリカとメキシコの国境地帯で、今なお繰り広げられる麻薬戦争の現実が、とてもリアルに生々しく描かれていきます。

最初から最後までなんとも言えない緊張感が漂うクライムアクションです。

「ブレードランナー2049」も話題で「メッセージ」「プリズナーズ」「灼熱の魂」のドゥニ・ビルヌーブ監督が、さすがともいうべき独自のタッチで、その重く扱いづらいテーマを見事に描ききっています。

あらすじ

巨大化するメキシコの麻薬カルテルを殲滅するため、米国防総省の特別部隊にリクルートされたエリートFBI捜査官ケイトは、謎のコロンビア人とともにアメリカとメキシコの国境付近を拠点とする麻薬組織撲滅の極秘作戦に参加する。しかし、仲間の動きさえも把握できない常軌を逸した作戦内容や、人の命が簡単に失われていく現場に直面し、ケイトの中で善と悪の境界が揺らいでいく。
引用:Netflix

キャスト・スタッフ紹介

  • 制作国:アメリカ
  • 公開年:2015年
  • 上映時間:121分
  • 監督:ドゥニ・ビルヌーブ
  • キャスト:エミリー・ブラント、ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン、ビクター・ガーバー、ジョン・バーンサル

独特の緊張感に包まれて

じんわりとした質感をもった空気が画面を支配し、そしてカラッとした田舎町が画面に明るく映し出されます。

そのどこか詩的な風景に思わず見とれていると、画面右下からライフルを構えた特殊部隊がカットインしてきます。

一気にあたりは緊張に包まれ、もはや画面の中の出来事とは思えないくらいの、リアルな緊張感を観る者に与えてきます。

ゆっくりと特殊部隊はターゲットの家の周りを取り囲みます。

やがて、大型のトラックが爆音とともに突入するのと同時に、特殊部隊も慌ただしく突入していきます。

エリート捜査官ケイト

エリートFBI捜査官ケイトは、巨大化するメキシコの麻薬カルテルを撲滅させるため、日夜命がけの潜入捜査に挑んでいます。

ケイトは潜入捜査がメインの特殊部隊という、男ばかりの環境で日夜捜査に挑む女性捜査官です。

臆することなくライフルを構え、大胆に突入する様は男顔負けで、現場のリーダーを任されています、

何度も命がけで麻薬カルテルのアジトに潜入し犯人たちを捕まえるのですが、一網打尽にはなかなか至りません。

突入時に攻撃を仕掛けてくる犯人たちと銃撃戦に至ることもしばしばです。時には現場に仕掛けられた爆薬に仲間を失うこともありました。

そんな、いたちごっこが続いている現状に、上層部もケイトたちもしびれを切らしていました。

機密だらけの重要な任務

上層部の人物が集まる会議に、ケイトと相棒のレジーは呼び出されていました。

何やら深刻そうな話をしている中に、ケイトは呼ばれ次の極秘の作戦に参加してほしいとのことでした。

Tシャツとビーチサンダルの怪しげな男は、詳しい話を拒み多くを語ろうとはせず、志願するかだけをケイトに迫ります。

その任務が成功すれば、麻薬カルテルを撲滅できるとの言葉を信じて、ケイトはその作戦のメンバーに志願します。

心配する相棒のレジーをよそに、ケイトの正義感と緊張感は高まっていきます。

境界線をまたいで

行き先も分からぬまま、マットとアレハンドロという怪しげな男と一緒に、自家用ジェットに乗って飛び立ちます。

すぐにふて寝するマットと、挨拶以外はあまり喋らぬアレハンドロ、何が行われるのか分からないケイト、この3人を乗せたジェット機の下には、乾いた大地が広がっています。

数時間のフライトを経て、気がつくとメキシコの国境近くの町の飛行場に着陸していました。

作戦会議の場で行われているやりとりでも、ケイトはこれから行われることを掴みきれずにいます。

マットに言われるがまま防弾チョッキを着せられ、戦争帰りだという屈強な男たちのメンバーとともに車で、国境を超えたメキシコの町ファレスを目指します。

善と悪のはざまで

ファレスそこは”野獣の町”とも揶揄される、世界でも有数の危険な町です。

もはや無法地帯ともいうべき、壮絶な悪がはびこる麻薬カルテルの本拠地でした。

遠くで鳴り響く銃声の音、その衝撃的な光景に驚きを隠せないケイトをよそに、任務は追行されていきます。

そして、これはまだ序章に過ぎませんでした。

一体彼らマットとアレハンドロは何物なのか、ケイトを必要とする彼らの本当の目的とは?

その後、巻き起こる善と悪のはざまを超えた、ボーダーラインを見逃すことはできません。

ハズレがないという期待

ドゥニ・ビルヌーブの監督作品は本当にどれもハズレがありません。

もちろん好みは人それぞれだと思いますが、どの作品もテーマもジャンルも何もかも違っていながら、物語の中に引き込ませる力がすごいように思います。

SFであれどサスペンスであれどアクションであれど、ドゥニ・ビルヌーブ監督が描く世界は、独特の間と空気が漂っています。

その細部までどこまでも丁寧に描写された世界は、まるで現実の出来事のように、画面全体を覆っていきます。

その奥域のある空間性とリアルな質感が、観る人を惹きつけ夢中にさせるのではないかと思います。

この『ボーダーライン』という作品も例外なく、ドゥニ・ビルヌーブの監督のそんな手腕が発揮されているように思います。

驚愕のサウンドトラック

サウンドトラックは、ドゥニ・ビルヌーブが監督した「メッセージ」でも音楽を担当していた、ヨハン・ヨハンソンが担当しています。

そのどこまでも映画の世界を貫くような、効果音や環境音と一体になったサウンドは、没入感をとことんまでに押し上げ、体感したことのない世界を我々に見せつけるかのようです。

アクション映画でここまで上質なサウンドトラックを聴けることは、滅多にないと思います。

サントラでありながら相当の完成度を誇っている音楽だと思います。

緊張感のボーダーライン

最初から最後まで目が離せない展開と、じんわりと語りかけるような映像、そしてその緊迫感を拡張するかのようなサウンドトラック。

目の前で超えてはいけないボーダーラインを超える瞬間の衝撃をぜひ味わってみてください。