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目次
オフビートの心地よさ
ニュージャージー州パターソン市で暮らしている、バス運転手のパターソンの何気ない日常を描いた人間味あふれるストーリーです。彼が過ごす7日間がゆったりとした間と心地よい流れの中で、オフビート感を満載に綴られていきます。
その風景はとても居心地が良く、何も変わらない毎日と捉えてしまいがちな日常の中にある、小さな変化や些細な美しさの偉大さやありがたみを思い知らされます。
ジム・ジャームッシュの前作から3年ぶりの待望の新作です。
あらすじ
ニュージャージー州パターソン市で暮らすバス運転手のパターソン。朝起きると妻ローラにキスをしてからバスを走らせ、帰宅後には愛犬マービンと散歩へ行ってバーで1杯だけビールを飲む。単調な毎日に見えるが、詩人でもある彼の目にはありふれた日常のすべてが美しく見え、周囲の人々との交流はかけがえのない時間だ。
引用：映画.com
キャスト・スタッフ紹介
- 制作国：アメリカ
- 公開年：2016年
- 上映時間：118分
- 監督：ジム・ジャームッシュ
- キャスト：アダム・ドライバー、ゴルシフテ・ファラハニ、バリー・シャバカ・ヘンリー、クリフ・スミス、チャステン・ハーモン
予告編
パターソンの日常
自分が暮らす街と同じ名前を持った主人公のパターソンはバスの運転手の仕事をしながら、妻のローラとブルドッグの愛犬のマービンとともに日常を育んでいます。
朝起きて妻のローラにキスをして、朝食のシリアルを食べて職場に向かいます。仕事前に職場の同僚と少し口をかわしてから、いつものようにバスを走らせます。
田舎でも都会でもないようなゆったりとした街並みの中、日が暮れる前の時間くらいまで仕事をして帰宅します。
夕食後は愛犬マービンと散歩へ行って、行きつけのバーで1杯だけビールを飲みます。
それはなんの変哲も無い繰り返しの日常に見えますが、小さな変化やありふれた日常にある美しさこそ、彼にとってはかけがえのないものなのです。
些細な事柄の中にあるもの
人はなぜだか日々の中に大きな変化を求めがちです。
大きな出来事や何かドラマチックな出来事を、いつの間にか期待し日常生活を送ってしまっているというのは、誰しも少なからずあるように思います。
何も起こっていないと思っている日常の中にも、些細な変化や美しさは確かに存在するはずです。パターソンはまさにその些細な出来事や風景を捉えて生活をしているように見受けられます。
それは朝起きていつも枕元に置いた腕時計で時間を確認することや、リビングにたまたま置いてあったマッチ箱のパッケージのデザインに見惚れることや、いつもと同じ通勤路の風景の些細な変化に気づいてみたりなど、他人から見れば特に大した出来事ではないのかもしれません。
しかし、その言葉にすることが出来ない、なんだか良く分からないどワクワクする事や綺麗だなと思う光景は、些細であるがゆえに見えるようで見えない繊細な風景なのではないでしょうか。
それは話言葉では表せない風景という言い方もできるかもしれません。
詩という言語
パターソンはいつも詩を書くためのノートを持っていて、ふとしたタイミングでノートを開き詩を綴ります。
詩と通常の文章の大きな違いはそこに文脈を持たない、あるいは物語を必要としない点が挙げられます。それは会話や文章のように何かを伝えるために、詩が存在する訳ではないからだと思います。
プログラミング言語がコンピューターに指示するための言語だとするならば、詩は日常の些細すぎて言葉にすることが出来ないことを、言語化する言語と言えるかもしれません。
詩は文脈や物語性を持たないからこそ、日常に溢れる些細な事柄を捕らえることができ、その微細な変化や輝きを表現できるのではないでしょうか。
つまり詩はありふれたことの美しさを表現するためのツールとも言えます。
ただそこにある7日間
なんの変哲も無い日常をこれだけ美しく、そして詩的に捕らえ描き出すという行為は、今まで映画の中ではなかなか行われなかったような気がします。
日常とアートが交錯する様を独特のオフビートで描き出すという唯一無二の技を、ジム・ジャームッシュはこの作品で披露してくれています。
それはこれまでどの作品でも独自の世界観を作り上げてきたからこそ、見据えることができ到達することができた世界観なのかもしれません。
まさに何度も観たくなる素晴らしい佇まいがここには垣間見れます。
白紙のノートが持つ可能性
詩というものは白紙のノートに字を書き込む事で成立しますが、ノートの白紙部分が持つ意味とは何なのでしょうか。
白紙であることそれは決してネガティブなことではなく、これからいくらでもその白紙を埋めることができるという希望が詰まっています。
日常生活にある空白や余白を楽しむということは、このノートの白紙部分を楽しむことに他ならないのではないでしょうか。
詩人が日常の些細な出来事から詩を紡ぐ時、我々の日常の些細な何かが少し変化しているような気がします。
それは目には見えない微細な出来事かもしれませんが、きっと少しだけ場の空気を和ませてくれる様な、柔らかく温かくそして優しさのある風景です。
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